人海戦術で解決しようとする上司に捧げる『ブルックスの法則』
あるある!こんなシチュエーション
「人手が足りないなら増やせばいい」プロジェクトが遅れると、すぐに人員追加を提案する上司。でも新メンバーへの説明で既存メンバーの時間が奪われ、かえって遅れが拡大する現実。
実践!こう使え!
「人を増やせば早くなる」という話が出たら「そういえばブルックスの法則って…」と呼び水を打つ。現場の人間なら分かるはず、その恐怖が。
詳しく解説!雑学のコーナー
ブルックスの法則は、1975年にフレデリック・ブルックスが著書『人月の神話』で提唱した、ソフトウェア開発における人員管理の法則です。「遅れているソフトウェアプロジェクトに人員を追加しても、プロジェクトをさらに遅らせるだけだ」という、直感に反する主張で知られています。 ブルックス自身はIBMでSystem/360の開発を指揮した経験から、この法則を導き出しました。当初30人で開始したプロジェクトが遅延し、最終的に1000人以上が投入されたにも関わらず、遅れは解消されませんでした。むしろコミュニケーションコストの増大により、開発効率は著しく低下したのです。 数学的に考えると、n人のチームでは n(n-1)/2 の通信経路が存在します。10人なら45通り、20人なら190通り、100人なら4950通りです。つまり、人数が2倍になってもコミュニケーションコストは4倍になるのです。マイクロソフトの研究では、チームサイズが7人を超えると、1人追加するごとに生産性が9%低下することが判明しています。 この法則は「9人の妊婦を集めても1ヶ月で赤ちゃんは生まれない」という比喩でも説明されます。タスクには並列化できないものがあり、特に知識集約型の作業では、新メンバーの学習期間(ランプアップタイム)を考慮する必要があります。アマゾンのジェフ・ベゾスは「ピザ2枚ルール」として、チームは2枚のピザで足りる人数(5-7人)に制限すべきだと提唱しています。 現代のアジャイル開発手法は、ブルックスの法則への対策として生まれた側面があります。スクラムでは理想的なチームサイズを3-9人と定義し、それ以上の規模には「スケールドスクラム」という別のフレームワークを適用します。グーグルの研究プロジェクト「アリストテレス」でも、チームの成功には人数より心理的安全性が重要であることが証明されています。
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