数字だけを追う上司が陥る『グッドハートの法則』

インテリ皮肉度
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あるある!こんなシチュエーション

「とにかくKPIを達成しろ!」数字ばかり見て現場を見ない上司。コード行数で評価されたら無駄に長いコードを書き、会議時間で評価されたら無意味に会議を延ばす。本末転倒もいいところ。

実践!こう使え!

KPIの設定会議で「指標って難しいですよね。グッドハートの法則みたいに、測定し始めると指標自体が目的化しちゃうことも」と一般論を装って。

詳しく解説!雑学のコーナー

グッドハートの法則は、1975年にイギリスの経済学者チャールズ・グッドハートが提唱した、測定と目標設定に関する警告的な法則です。「ある指標が目標になった瞬間、その指標は良い指標ではなくなる」という内容で、現代のKPI管理における最大の落とし穴を指摘しています。 グッドハートは元々イングランド銀行の金融政策アドバイザーで、マネーサプライを目標に金融政策を運営しようとした際の失敗から、この法則を発見しました。中央銀行がマネーサプライをコントロールしようとすると、金融機関は規制を回避する新しい金融商品を開発し、結果的に指標と実体経済の関係が崩れてしまったのです。 教育分野では「キャンベルの法則」として知られる類似現象があります。アメリカで導入された標準テストによる学校評価制度では、教師が「テスト対策」に特化した授業を行い、本来の教育目標である創造性や批判的思考力の育成が疎かになりました。アトランタでは組織的な不正採点事件まで発生し、178人の教育関係者が起訴される事態となりました。 企業経営でも同様の事例は枚挙にいとまがありません。ウェルズ・ファーゴ銀行では、口座開設数をKPIにした結果、顧客の同意なしに350万件の不正口座が開設されました。コールセンターで通話時間を短縮するKPIを設定したら、オペレーターが問題を解決せずに電話を切るようになり、顧客満足度が急落した事例もあります。 ソ連の計画経済では、この法則の極端な例が観察されました。釘の生産を重量で評価したら巨大な釘ばかり作られ、個数で評価したら極小の釘ばかりになりました。靴工場では左足用ばかり生産されたこともあります。現代の中国でも、GDP成長率を地方政府の評価指標にした結果、ゴーストタウンが大量に建設される事態が発生しています。 最新の研究では、複数の指標を組み合わせる「バランスド・スコアカード」や、結果指標と先行指標を分離する「OKR」などが提案されていますが、完全な解決策は存在しません。重要なのは、指標はあくまで現実の近似値であり、指標の最適化が必ずしも本来の目的達成につながらないことを理解することです。

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