失敗を認めない上司が陥る『サンクコストの誤謬』

インテリ皮肉度
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あるある!こんなシチュエーション

「ここまでやったんだから最後までやり遂げよう」明らかに失敗しているプロジェクトなのに、投資した時間とお金を理由に続行する上司。沈みかけた船にさらに荷物を載せる気ですか?

実践!こう使え!

「もうここまで投資したから」という話が出たら「サンクコストですね」とポツリ。経済学を知っている人ならピンと来るかも。

詳しく解説!雑学のコーナー

サンクコストの誤謬(Sunk Cost Fallacy)は、すでに支払って回収不可能なコスト(埋没費用)に囚われて、合理的でない意思決定をしてしまう認知バイアスです。経済学では「過去のコストは未来の意思決定に影響すべきでない」という原則があるにも関わらず、人間は感情的にこの原則に逆らってしまうのです。 この概念が広く認識されるきっかけとなったのは、超音速旅客機コンコルドの開発です。英仏共同プロジェクトは、早い段階で商業的に成功しないことが明らかになりましたが、すでに投資した巨額の資金を理由に開発を継続。最終的に、わずか20機の生産で終了し、両国合わせて約60億ドルの損失を出しました。この失敗は「コンコルド効果」とも呼ばれています。 心理学実験でこの効果の強さが実証されています。映画館実験では、つまらない映画を見ている人に退出を促しても、チケット代を自分で払った人の方が、無料招待された人より長く座席に留まりました。また、ビュッフェレストランでは、高い料金を払った客ほど、満腹でも無理に食べ続ける傾向が観察されています。 企業の失敗事例は枚挙にいとまがありません。コダックはデジタルカメラ技術を最初に開発しながら、フィルム事業への投資を理由に転換が遅れ倒産。ノキアも既存の携帯電話事業へのこだわりからスマートフォン市場を逃しました。日本でも、多くの地方空港や第三セクター事業が、初期投資の大きさを理由に赤字運営を続けています。 脳科学研究により、この誤謬の神経基盤が解明されつつあります。損失を認めることは、脳の痛みを処理する領域(前帯状皮質)を活性化させ、文字通り「心理的な痛み」を生じさせます。また、一貫性バイアスにより、過去の決定を正当化しようとする傾向も影響しています。投資額が大きいほど、認知的不協和を解消するために、より強く継続を正当化しようとするのです。 興味深いことに、この誤謬を回避する方法も研究されています。「ゼロベース思考」では、「もし今からスタートするなら、このプロジェクトを始めるか?」と問い直します。また、「キルスイッチ」として、事前に撤退基準を明確に設定する方法も有効です。グーグルは「20%ルール」の失敗プロジェクトを素早く終了させることで知られ、「早く失敗し、早く学ぶ」文化を築いています。

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