部下を信じない上司が知らない『ピグマリオン効果』
あるある!こんなシチュエーション
「どうせできないだろうけど、一応やってみて」最初から期待していない態度を隠そうともしない上司。そんな態度で部下のモチベーションが上がるわけないでしょう。予言の自己成就って知ってます?
実践!こう使え!
部下の評価を聞いたら「期待って大事ですよね。ピグマリオン効果みたいに、期待された人は伸びるって」と一般論へ。伝わるかどうかは別問題。
詳しく解説!雑学のコーナー
ピグマリオン効果は、1968年に心理学者ロバート・ローゼンタールとレノア・ヤコブソンが発表した、期待が現実を作り出す現象です。ギリシャ神話の彫刻家ピグマリオンが、自作の女性像に恋をし、その思いの強さから像が人間になったという物語から名付けられました。 実験は衝撃的でした。サンフランシスコの小学校で、生徒にIQテストを実施し、教師に「今後成績が伸びる可能性が高い生徒」のリストを渡しました。実はこのリストは完全にランダムに選ばれた生徒でしたが、1年後、リストに載った生徒は実際にIQが大幅に向上したのです。特に低学年では、期待された生徒のIQが平均27ポイントも上昇しました。 この効果のメカニズムは「4要因理論」で説明されます。教師は期待する生徒に対して、(1)より温かい感情的な雰囲気を作り、(2)より難しい課題を与え、(3)より多くの発言機会を提供し、(4)より詳細なフィードバックを行います。これらの微細な行動の違いが、累積的に大きな成果の差を生み出すのです。 ビジネス界でも多くの実証例があります。メットライフ保険では、楽観性テストで不合格だが特別枠で採用された営業職員が、通常採用者より21%高い成績を上げました。また、リーダーシップ研究では、部下への期待を意図的に高めたマネージャーのチームは、生産性が平均15%向上することが確認されています。 一方、逆の現象である「ゴーレム効果」も存在します。低い期待は低いパフォーマンスを生み出すのです。イスラエル国防軍の研究では、「能力が低い」とラベル付けされた兵士は、実際の能力に関わらず、訓練成績が有意に低下しました。日本の企業でも、「ゆとり世代」「さとり世代」といったレッテルが、実際の能力とは無関係に、パフォーマンスに悪影響を与えている可能性が指摘されています。 最新の脳科学研究では、期待は実際に脳の神経回路を変化させることが分かっています。期待されることでドーパミン分泌が増加し、学習効率が向上します。また、期待する側の脳でも、ミラーニューロンの活性化により、無意識のうちに相手を支援する行動が増えることが確認されています。つまり、ピグマリオン効果は単なる心理的な現象ではなく、生物学的な基盤を持つ現象なのです。
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