危機を軽視する上司が持つ『正常性バイアス』

インテリ皮肉度
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あるある!こんなシチュエーション

「大丈夫、何とかなる」明らかに炎上しているプロジェクトなのに、危機感ゼロの上司。赤信号みんなで渡れば怖くない、じゃないんですよ?現実見えてます?

実践!こう使え!

「大丈夫だろう」という楽観論を聞いたら「正常性バイアス、怖いですよね。災害心理学の本で読んだんですけど」と、さりげなく不安を共有。

詳しく解説!雑学のコーナー

正常性バイアス(Normalcy Bias)は、異常事態に直面しても「きっと大丈夫」「いつも通り」と考えてしまう心理的傾向です。災害心理学では「正常化の偏見」とも呼ばれ、危機的状況での判断を誤らせる最も危険な認知バイアスの一つとされています。 2011年の東日本大震災での釜石市の事例が教訓的です。津波警報が出ても、多くの住民が「前回も大丈夫だった」と避難を遅らせました。一方、「津波てんでんこ」の教育を受けていた小中学生は即座に避難し、99.8%が生存。大人の正常性バイアスと、子供の適切な危機認識の差が、生死を分けたのです。 航空事故の分析も衝撃的です。1977年のテネリフェ空港衝突事故(死者583人)では、濃霧の中で管制官の指示を「いつも通り」と解釈した機長の正常性バイアスが原因の一つでした。事故調査の70%で、「異常の兆候を正常の範囲内と誤認」したことが要因として挙げられています。 ビジネスの世界でも致命的です。2008年のリーマン・ショックでは、多くの金融機関が「サブプライムローンは局所的な問題」と軽視。ベア・スターンズのCEOは破綻の5日前まで「流動性に問題はない」と主張していました。正常性バイアスが、100年に一度の金融危機を「いつもの調整」と誤認させたのです。 日本企業の不祥事でも顕著です。東芝の不正会計では、7年間で2248億円の利益水増しが行われましたが、経営陣は「達成可能な目標」と言い続けました。オリンパスの損失隠しも20年間続きましたが、歴代社長は「一時的な問題」と認識していました。小さな異常を「正常の範囲内」と解釈し続けた結果、取り返しのつかない事態に至ったのです。 心理学的メカニズムとして、正常性バイアスは「認知的節約」の一種です。脳は情報処理を効率化するため、異常事態を「既知のパターン」に当てはめようとします。また、ストレス下では扁桃体の過剰反応を抑えるため、前頭前野が危険信号を抑制することも判明しています。 興味深いことに、正常性バイアスは経験豊富な人ほど強くなる傾向があります。「今まで大丈夫だった」という経験が、新しい危機への感度を鈍らせるのです。一方、適度なパラノイア(警戒心)を持つ経営者の企業は、危機を早期に察知し、生存率が高いことが研究で示されています。インテルのアンディ・グローブの「パラノイアだけが生き残る」という言葉は、正常性バイアスへの警告でもあるのです。

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