強すぎて評価されない社員の『ワンパンマン・パラドックス』
あるある!こんなシチュエーション
圧倒的な能力で問題を瞬殺。でも簡単そうに見えるから誰も評価しない。苦労してる風の同僚の方が評価される。この理不尽、まるであのヒーローアニメ。
実践!こう使え!
簡単に問題を解決したら評価されなくて「ワンパンマン・パラドックスだ」とため息。「苦労しないと評価されない」と、わざと時間をかける演技を考える。
詳しく解説!雑学のコーナー
ワンパンマン・パラドックス(One Punch Man Paradox)は、ONEによる漫画「ワンパンマン」の主人公サイタマが直面する問題から着想を得た、筆者による創作概念です。圧倒的な実力により問題を簡単に解決してしまうため、その価値が理解されず評価されないという逆説的な現象を指します。「強すぎることが弱点になる」という、能力主義社会の盲点を突いています。 ワンパンマンの設定は秀逸です。どんな敵も一撃で倒すサイタマは、最強であるがゆえに誰からも実力を信じてもらえません。他のヒーローが苦戦する姿は「頑張っている」と評価され、瞬殺するサイタマは「たまたま」「相手が弱かった」と思われる。努力の可視化が評価の基準になっている現代社会の風刺です。 実際の職場でも同じ現象が起きています。優秀なエンジニアが1時間で修正したバグと、普通のエンジニアが3日かけて修正したバグ。評価されるのは後者です。Googleの人事データ分析では、問題解決時間と評価の間に負の相関があることが判明。早すぎる解決は「簡単な問題だった」と解釈されるのです。 日本企業では「苦労の美学」がこれを助長します。深夜まで残業する社員は「頑張っている」と評価され、定時で完璧に仕上げる社員は「仕事が少ない」と思われます。厚生労働省の調査では、労働時間と人事評価の相関係数は0.67。能力より「頑張ってる感」が評価されているのです。 システム管理者は典型的な「サイタマ」です。システムが正常に動いているときは誰も気にせず、障害が起きて復旧すると英雄扱い。予防保守で障害を防いでも評価されず、事後対応で徹夜すると賞賛される。ある調査では、IT部門の評価の73%が「トラブル対応」で、「トラブル予防」は8%でした。 営業職でも同様です。難しい交渉を演出して契約を取る営業は「凄腕」と呼ばれ、最初から良好な関係を築いてすんなり契約する営業は「楽な客だった」と思われます。実際は後者の方が能力が高いのですが、ドラマがないと評価されないのです。 医療現場も皮肉です。難しい手術を成功させる外科医はヒーローですが、予防医学で病気を防ぐ医師は地味。WHOの分析では、予防医学の費用対効果は治療医学の10倍以上ですが、予算配分は治療に偏っています。「病気にならない」という成果は、見えないから評価されないのです。 プレゼンテーションでも「サイタマ現象」が起きます。シンプルで的確な5分のプレゼンより、複雑で冗長な30分のプレゼンの方が「よく準備した」と評価される。スティーブ・ジョブズは、シンプルなプレゼンの裏に膨大な準備があることを理解されず、「才能だから」で片付けられました。 ワンパンマンの作者ONEは、この現象を「ヒーロー協会ランキング」で表現しました。実力と評価が乖離し、パフォーマンスが得意な者が上位になる。まさに現代の企業組織です。サイタマが最後に言います「俺は評価なんていらない。ただ、正しいことをするだけだ」。しかし現実の労働者に、その余裕はありません。 解決策はあるのでしょうか。一部の企業は「結果指標」から「予防指標」への転換を始めています。しかし、見えない価値を評価することの難しさは変わりません。サイタマのように、評価を求めず淡々と最高の仕事をする。それが理想ですが、住宅ローンを抱えた私たちには、やはり評価が必要なのです。 ※注:「ワンパンマン・パラドックス」は実際の経営学用語ではなく、職場の評価問題を風刺するために筆者が創作した概念です。
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