チーム力を過信する上司と『社会的手抜き』の現実
あるある!こんなシチュエーション
「みんなで協力すれば大丈夫」20人のプロジェクトチームを作って満足している上司。でも実際に働いているのは3人だけ。残りの17人は何してるんでしょうね?社会的手抜きって聞いたことあります?
実践!こう使え!
大人数で作業する話になったら「綱引きをすると人数が増えるほど一人あたりの力が弱まるって、リンゲルマン効果でしたっけ」と雑学を装って。
詳しく解説!雑学のコーナー
社会的手抜き(Social Loafing)は、1913年にフランスの農業工学者マクシミリアン・リンゲルマンが発見した現象です。彼の実験では、綱引きで1人の力を100%とすると、2人では93%、3人では85%、8人では49%まで、一人当たりの貢献が低下しました。集団になると個人の努力が減少する、という衝撃的な発見でした。 この現象は「リンゲルマン効果」とも呼ばれ、その後の研究で普遍的な人間行動であることが証明されました。1974年の「拍手実験」では、集団で拍手する際の音量は、個人の総和の半分以下でした。「叫び実験」でも同様の結果が得られ、6人グループでは個人の36%の力しか発揮されませんでした。 メカニズムは3つの要因で説明されます。第一に「責任の分散」。集団では個人の貢献が見えにくくなり、責任感が薄れます。第二に「評価懸念の低下」。個人の成果が特定されないため、評価を気にしなくなります。第三に「協調損失」。他のメンバーも手を抜いているだろうという推測が、さらなる手抜きを正当化します。 現代のソフトウェア開発プロジェクトでの研究は衝撃的です。10人以上のチームでは、実際にコードを書いているのは平均3人だけ。残りは会議への出席やレビューのコメントなど、「仕事をしているふり」に時間を費やしています。GitHubのコミット履歴を分析した研究では、プロジェクトの90%のコードは、チームの20%のメンバーによって書かれていることが判明しました。 日本企業では「大部屋主義」として、この問題が顕在化しています。50人規模の部署で実際に価値を生み出しているのは5-6人という調査結果があります。特に、責任の所在が曖昧な「全員参加型プロジェクト」では、社会的手抜きが極大化します。ある大手企業では、プロジェクトチームを20人から5人に削減したところ、生産性が2倍に向上した事例が報告されています。 対策として効果的なのは「社会的促進」の活用です。個人の貢献を可視化し、評価と直結させることで、手抜きを防げます。アジャイル開発の「デイリースタンドアップ」は、毎日の進捗を共有することで、社会的手抜きを防ぐ仕組みです。また、Amazonの「Two-Pizza Team」(ピザ2枚で足りる人数)は、チームを小さく保つことで、全員の貢献を不可欠にしています。 最新の研究では、リモートワークが社会的手抜きを助長する可能性が指摘されています。カメラオフのWeb会議では、参加者の63%が他の作業をしながら参加していることが判明しました。一方で、明確な成果指標と個人の貢献度を可視化するツールを導入した企業では、リモートでも生産性が向上しています。重要なのは、人数ではなく、個人の責任と貢献を明確にすることなのです。
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