矛盾だらけの指示を出す上司と『認知的不協和』
あるある!こんなシチュエーション
「効率を上げろ、でも慎重にやれ」「イノベーションを起こせ、でも失敗するな」矛盾した指示を平気で出す上司。どっちを優先すればいいんですか?頭の中で整合性取れてます?
実践!こう使え!
矛盾した指示を受けたら「どっちを優先します?認知的不協和で頭がパンクしそうで」と困ったふりをしながら。心理学用語だと気づくかな。
詳しく解説!雑学のコーナー
認知的不協和(Cognitive Dissonance)は、1957年に社会心理学者レオン・フェスティンガーが提唱した心理学理論です。人が矛盾する認知(信念、態度、行動)を同時に抱えた時に感じる不快な緊張状態を指し、この不快感を解消するために、人は自己の認知を変更したり、正当化したりする傾向があります。 フェスティンガーの有名な実験は衝撃的でした。被験者に1時間退屈な作業をさせた後、次の被験者に「楽しい作業だった」と嘘をつかせ、報酬として1ドルまたは20ドルを支払いました。後で本当の感想を聞くと、1ドル群の方が「実際に楽しかった」と答える傾向が強かったのです。20ドルなら嘘をつく十分な理由になりますが、1ドルでは正当化できないため、自分の認知を「本当に楽しかった」に変更したのです。 日本の企業文化では、この現象が顕著に現れます。「和を重んじる」と言いながら「競争力を高めろ」、「ワークライフバランス」を謳いながら「成果を出せ」という矛盾した要求が日常的です。ある調査では、管理職の78%が「会社の方針と現場の実態に矛盾を感じる」と回答しながら、その矛盾を「必要悪」として正当化していることが判明しました。 ビジネスの世界では「ダブルバインド」として知られる類似概念があります。グレゴリー・ベイトソンが提唱したこの理論は、矛盾するメッセージを同時に受け取ることで、受け手が身動きできなくなる状況を指します。「自主的に考えろ、でも指示通りにやれ」という典型的なダブルバインドは、部下の創造性を破壊し、学習性無力感を引き起こします。 神経科学の研究により、認知的不協和の脳内メカニズムが解明されています。fMRI研究では、矛盾を感じた時、前帯状皮質(痛みや葛藤を処理する領域)が活性化することが確認されました。つまり、認知的不協和は文字通り「脳に痛み」を与えるのです。この痛みから逃れるため、人は現実を歪めてでも一貫性を保とうとします。 興味深いことに、認知的不協和は「コミットメントと一貫性」の原理とも関連しています。一度公言したことと矛盾する事実に直面すると、事実を否定してでも一貫性を保とうとします。これが、明らかに失敗しているプロジェクトを上司が認めない理由の一つです。沈没コストの誤謬と組み合わさると、組織に致命的な損害を与えることもあります。
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