問題を解決したくない組織の『シャーキーの原理』

インテリ皮肉度
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あるある!こんなシチュエーション

「問題解決のためのタスクフォース」が3年目に突入。会議は増え、レポートは山積み、でも問題は全く解決しない。実はこれ、組織が問題を温存する理由がある。

実践!こう使え!

何年も続く「改革プロジェクト」を見て「シャーキーの原理かな」と独り言。「問題を解決したら仕事がなくなりますもんね」と書類の山を眺める。

詳しく解説!雑学のコーナー

シャーキーの原理(Shirky Principle)は、作家でテクノロジー評論家のクレイ・シャーキーが2010年に提唱した組織論の原理です。「組織は、自らが解決すると称している問題を、永続化させる傾向がある」という、組織の自己保存本能を指摘した法則です。 シャーキーはこの原理を、複雑な規制産業を観察して発見しました。税務コンサルタントは税制の簡素化に反対し、セキュリティ企業はセキュリティ脅威の根本解決より対症療法を好み、ダイエット産業は肥満問題の解決より継続的な顧客を求めます。問題の解決は、自らの存在意義の消失を意味するからです。 典型例は米国の税務申告産業です。TurboTaxなどの税務ソフト企業は、年間数十億ドルの売上を上げながら、税制簡素化法案に対して猛烈なロビー活動を展開。「納税者の利益を守る」と主張しながら、実際は複雑な税制の維持に全力を注いでいます。 日本の例では、各種の「対策委員会」が象徴的です。いじめ対策委員会、ハラスメント防止委員会、コンプライアンス委員会。これらは問題の存在を前提とし、問題がなくなれば委員会自体が不要になります。結果として、問題の「管理」はしても「根絶」はしない構造が生まれます。 IT業界でも顕著です。レガシーシステムの保守を請け負う企業は、システムの抜本的な刷新より、永続的な保守契約を好みます。年間保守費用が新システム構築費を超えても、「リスク回避」を理由に現状維持を推奨。10年後も同じシステムを使い続ける企業が後を絶ちません。 医療分野の「病気産業」も同様です。製薬会社は症状を管理する薬は開発しても、病気を完治させる薬の開発には消極的。糖尿病薬の市場は年間10兆円ですが、もし糖尿病が完治可能になれば、この市場は消滅します。「患者」ではなく「慢性的な顧客」を作る動機が働くのです。 コンサルティング業界の調査では、問題解決型プロジェクトの63%が、新たな問題の発見で終わり、次のプロジェクトにつながっていました。「解決」ではなく「問題の継続的な発見と管理」が、実質的なビジネスモデルになっています。 シャーキーの原理の恐ろしさは、関係者全員が善意で行動していても機能することです。問題解決に従事する人々は、意識的に問題を温存しているわけではありません。しかし、組織の構造とインセンティブが、無意識のうちに問題の永続化を促進するのです。

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