どうでもいいことほど激論になる『セイヤーの法則』

インテリ皮肉度
シェア:𝕏finL

あるある!こんなシチュエーション

会議室の温度設定で30分。コーヒーメーカーの機種選定で2時間。重要な経営判断は5分で終了。なぜ些細なことほど白熱するのか、学者が解明していた。

実践!こう使え!

どうでもいい議題で会議が紛糾したら「セイヤーの法則ですね」とつぶやく。「重要じゃないことほど議論が激しくなる」と資料を片付けながら付け加える。

詳しく解説!雑学のコーナー

セイヤーの法則(Sayre's Law)は、政治学者ウォレス・スタンリー・セイヤーが提唱した組織行動の法則です。「学術政治がこれほど激しいのは、賭けられているものがこれほど小さいからだ」という皮肉な観察から生まれました。つまり、「争点の重要性と議論の激しさは反比例する」という法則です。 セイヤーはコロンビア大学で20年間、教授会を観察しました。学部の将来を左右する重要議題は淡々と決まるのに、駐車場の割り当てや研究室の配置といった些細な問題で、普段温厚な教授たちが激しく対立。彼は「知的な人間ほど、つまらないことで感情的になる」と結論づけました。 この現象には心理学的根拠があります。重要な決定には専門知識が必要で、多くの人は発言を控えます。しかし、コーヒーの味や室温なら誰でも意見を持てます。MITの研究では、議題の専門性が低いほど発言者が増え、議論時間が平均2.3倍長くなることが判明しました。 企業でも同じです。Googleの会議分析によると、製品戦略は平均23分で決定されるのに、社内カフェのメニュー変更には平均67分かかっていました。マッキンゼーの調査では、予算1億円以上の投資判断より、10万円以下の備品購入の方が、承認プロセスが複雑という皮肉な結果も出ています。 日本企業の例も豊富です。ある大手メーカーでは、100億円の工場建設は役員会で30分で承認されましたが、社員食堂のメニュー改定には、6回の会議と延べ12時間を費やしました。理由は簡単で、工場建設は専門部署に任せられますが、食堂は全員が「専門家」だからです。 セイヤーの法則は「自転車置き場の議論」とも関連します。原子力発電所の設計は専門家に任せ、自転車置き場の色で延々議論する。これは「理解できる範囲でしか人は貢献できない」という認知的限界を示しています。 学術界では特に顕著です。ハーバード大学の研究によると、終身在職権(テニュア)の審査は平均45分ですが、教員ラウンジのコーヒーマシン更新には3ヶ月の議論を要しました。ノーベル賞受賞者のポール・サミュエルソンは「大学の会議の90%は、10%の価値しかない議題に費やされる」と嘆いています。 この法則の恐ろしさは、組織のエネルギーを消耗させることです。些細な勝利に固執し、重要な戦略を見失う。セイヤー自身、「賢い人々が愚かな議論に時間を浪費する様子は、民主主義の最大の皮肉だ」と述べています。

※ ご利用は自己責任でお願いします。当サイトは、あなたの職場での人間関係を一切保証いたしません。

こちらの記事もおすすめ