無駄に高いものを買いたがる上司と『ヴェブレン効果』

インテリ皮肉度
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あるある!こんなシチュエーション

「高い方が品質がいいはずだ」機能は同じなのに、わざわざ高額な備品を選ぶ上司。実はこれ、19世紀の経済学者が解明した、見栄と消費の心理学。

実践!こう使え!

無駄に高い備品を買った上司に「ヴェブレン効果ってやつですかね」とつぶやく。「高いものほど欲しくなる心理」と請求書を見ながらため息。

詳しく解説!雑学のコーナー

ヴェブレン効果(Veblen Effect)は、経済学者ソースティン・ヴェブレンが1899年の著書『有閑階級の理論』で提唱した消費行動の現象です。「価格が高いほど需要が増える」という、通常の需要法則に反する現象で、「顕示的消費」とも呼ばれます。 ヴェブレンは19世紀末のアメリカで、富裕層の奇妙な消費行動を観察しました。実用性のない装飾品、必要以上に豪華な邸宅、非効率な使用人の雇用。これらは経済合理性では説明できません。彼は、消費の目的が「使用」ではなく「誇示」にあることを発見しました。 現代でも例は豊富です。ロレックスの時計は、精度ではセイコーのクォーツに劣りますが、価格は100倍。エルメスのバーキンバッグは、5年待ちで定価の3倍のプレミアがつきます。機能性では説明できない価値が、まさに「高額であること」自体から生まれています。 企業の購買行動でも顕著です。IBMには「誰もIBMを買ってクビになった人はいない」という格言がありました。性能やコストパフォーマンスより、「高額で有名なブランド」を選ぶことが、意思決定者の保身になるのです。日本でも、官公庁や大企業が必要以上に高額なシステムを導入する傾向があります。 心理学実験でも実証されています。スタンフォード大学の実験では、全く同じワインを異なる価格で提供したところ、高価格版の方が「美味しい」と評価されました。fMRIスキャンでは、高価格を見た被験者の脳の報酬系が実際に活性化。価格が味覚体験を物理的に変えていたのです。 日本の事例では、バブル期の企業接待が典型的です。一人10万円の料亭、300万円のゴルフ会員権、1本100万円のワイン。実質的な商談はファミレスでも可能ですが、「金額の大きさ」が相手への敬意と自社の実力を示すシグナルとして機能していました。 教育分野でも同様です。学習効果に差がないのに、月謝30万円の予備校が人気を集めます。親は「高額=良質な教育」と信じ、高い学費自体が「子供への投資を惜しまない良い親」であることの証明になります。 ヴェブレン効果の皮肉は、全員がこの効果を理解しても、効果が消えないことです。むしろ「ヴェブレン効果を知っている sophisticated な消費者」として、さらに高額商品を選ぶ傾向すらあります。見栄の連鎖は、理性では断ち切れないのです。

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